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アンダー・ザ・スキン
¥1,000
末埼鳩のSF・幻想短編小説集。 皮の下になにがあるのか。皮の下はみんなおんなじ。 私の思想と祈りを詰め込んだ、生命への賛歌です。 挿画はゴトーヒナコさんにお願いしました。 楽園に着いた人の話、アリの国に招かれた人の話、馬がサイボーグになった未来の話、夜の街を歩く女子たちの話、カラスに生まれ変わった人の話、シェルターで暮らす夫婦の話など、7編収録。 動物と人間。生きることと死ぬこと。わたしたちの断絶と繋がり。世界の秘密に触れてみたいあなたに贈ります。 B6サイズ・100ページ 2025年11月23日発行 *** 最初は血のような色をしていた。べたつかず、味も匂いもない綿菓子のような、濃密な赤い靄に包まれていた。どこから来たのか思い出せないが、歩いていかなければならないことはわかっていた。私は両手で靄をかき分けながら歩き続けた。靄は、触れると溶けるように消えてしまう。歩くにつれ、靄の色はどす黒い赤から鮮血のような赤へ変わっていった。光が強くなるとか密度が薄くなるというのではなく、ミルク色の別の靄が混ざってきている感じがした。現に今の靄はピンク色をしている。ピンクの靄の中をしばらく歩くと、急に視界が開けた。私は立ち止まった。 そこは見渡す限り広大な荒地だった。丘や谷も全て赤茶色の土が剥き出しで、背の低い植物がまばらに生えているのが見える。振り向くとピンクの靄は消えていた。私はとりあえず一番近そうな丘を目指した。その時初めて気付いたのだが、私は裸足だった。どれほど歩いても私の足は傷付かず疲れることもなかった。体中の感覚が靄に包まれていた頃と同じようにふわふわと穏やかだった。 (『楽園』冒頭より)
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身辺愛着計画
¥800
末埼鳩はじめての日記本。 文筆家を名乗って活動する主婦の一年分の日記と、日記にまつわるエッセイを収録。 本を読んだり映画を観たり、生き物をつんつんしたりする日々。 身辺に愛着を持てたら、世界から少しだけ寂しさが減ると思うんです。 文庫本サイズ106ページ。『普通の日記』が続かなかったあなたにおすすめ。 2026年1月10日発行 *** 身辺愛着計画? 自分の内面と向き合うのではなく、外にあるものを記録していく。そうしているうちに自分の形が見えてくる。自分を形作っているものは、自分の外側にある色々で、その色々はまたさらに外側の色々と関係している。それが延々繰り返され、自分と全てのものが関係していることが何となくわかってくる。そういう実感によって不安や寂しさが軽減される。そんな人が増えるといいな。それが身辺愛着計画です。もしこの本を読んで「こういう形の日記なら書けるかも」と思ったらぜひ試してみて欲しいです。(エッセイより抜粋)
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野良庭へ
¥800
『野良庭へ』 道端の植物写真のZINE。生命力を感じさせつつもどこか均整の取れた植物たち。そういう植物がある場所を【野良庭】と呼んでいます。2016年頃から撮りためた中から選んだ写真とそれに対する短い文章で構成されています。 2023年3月18日発行 B6中綴じ製本 フルカラー24ページ *** 子供の頃から散歩をするのが好きだった。平日昼間の住宅地は静かで、人の気配はあってもすれ違う人はほとんどいない。他人の家と庭しかない地域を通るとき、私は「よそもの」だと思う。この辺りに住む人は私のことを知らない。それだけで、ささやかな冒険だった。 大人になっても私はうろうろと散歩を続けた。やがて、庭からはみ出た園芸植物や路上に生える野草の写真を撮るようになった。生命力を感じさせつつもどこか均整のとれた植物たち。そういう植物がある場所を『野良庭』と呼ぶことにした。 (序文より)
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砂丘
¥500
テーマに沿って書いた500字小説をまとめました。ほとんどはSNSを通じて頂いたテーマです。30本入り。1ページでひとつのお話を読むことができます。B6サイズ。 *試し読み* 『癇癪(かんしゃく)持ち』 彼女は真っ白な固形石鹸を丁寧に泡立てて顔を洗う。私は洗面所の隅にしゃがんで歯を磨きながら、彼女の手の平が滑らかに動く様を眺める。それは、二人の日課だった。彼女は私より少し若いルームメイトで、特別仲が良いわけでもなく絶妙な距離感のまま同居して半年になる。こんな暮らしが上手くいくなんて奇跡みたいだと私は思う。同時に、近い将来終わりが来るだろうことも予見していた。だけど、それはあまりにも唐突だった。 ある朝彼女はいつものように石鹸を泡立てながら、ぽろぽろと涙をこぼした。私は彼女が失恋したばかりだと知っていたし、同情を求めている訳でもないとわかっていたから黙って歯磨きを続けた。彼女は手の平を動かし続け、一向に洗顔に移る様子がなかった。泡はどんどん膨らんでいく。手の平を超え、手首を覆い、肘まで到達した辺りで私は異変に気付いた。石鹸ではなく、彼女自身が少しずつ溶け出して、泡になっているのだ。上半身が埋まり首元まで白い泡に包まれた彼女はまるで幼い子どものように顎を上げて大声で泣いた。 「ぱちん」 泡が弾ける音がして、彼女は消えた。私は歯ブラシを咥えたまま大量の泡が溢れ返る洗面所で惚けていた。 テーマ:洗顔石鹸のあわ
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棚の中、頭の中
¥500
『棚の中、頭の中』 文筆家の末埼鳩と小説を書くオカワダアキナ( https://twitter.com/okwdznr )の合同ZINE。読書にまつわるエッセイ集です。共通のテーマで本を選び、感じたことを書きました。本棚の中と頭の中のゆるゆるとした繋がりについて書こうという企画でしたが、心に起きた反応を正直に書いてしまった気がします。 書くものも書くスタンスも異なる二人ですが、本の前では嘘をつかない(つけない)ところは似ているかもしれません。買ったものの読んでいない本を交換して読み合う『積読交換』コーナーもあります。 2023年3月18日発行 B6中綴じ製本24ページ <選書一覧> 「紙の動物園」ケン・リュウ 「走れ、オヤジ殿」キム・エラン 「旅をする木」星野道夫 「何も共有していない者たちの共同体」アルフォンソ・リンギス 「大きな鳥にさらわれないよう」川上弘美 「キルケ」マデリン・ミラー 「夢見る宝石」シオドア・スタージョン 「灯台守の話」ジャネット・ウィンターソン 「注文の多い料理店」宮沢賢治 「ディスタント」ミヤギフトシ 「マイ・ロスト・シティー」スコット・フィッツジェラルド 「工場」小山田浩子
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メムユーヒカ
¥500
SOLD OUT
眠ってばかりいた頃にみた夢たちをつなぎ合わせて小説にしました。不気味だけど少し切ない、夢の街をさまよう「私」の物語。 B6 中綴じ製本 全28ページ 【目次】 明るい海辺 1 見しらぬ住宅地 2 だれかの家 3 夕暮れの自宅 4 広すぎる校舎 5 忘れられたプール 6 なぞの研究所 7 奇妙なデパート 8 夢の街 明るい海辺2
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